雪国の春(転職記念登山と星景写真)

2020年3月25日 20時52分頃  カメラ:EOS R(HKIR改造) レンズ:Sigma 15mm F2.8 魚眼(F3.5) 露出15秒 ISO 4000 ※ドロップイン・フィルター付きマウント・アダプターを使用し、レンズ後部にソフト・フィルター(Lee 3)を取り付けて撮影。星野部は1枚、前景は5枚を加算平均したものを合成。Photoshop及びLightroomで処理。

来月から転職するため、今の職場で僅かばかり有給休暇をとり、3月25日から26日にかけて新潟県の東谷山(ひがしやさん)に行ってきました。降雪期限定で平標山や谷川山系の展望台として知られている山らしいです。

移動性高気圧がすっぽり日本列島を覆い、車中のラジオでは「一円玉のような天気(=崩しようのない好天)」と言っていたので、一晩中星を撮ろうと期待しながら登りました。実際には、25日夕方から翌朝まで関東方面に雲の帯がかかり、南方向の空は今一つでした。星景撮影では、往々にしてこういうことがありますよね。

最初に紹介するのは、東の空に現れた春の星座を魚眼レンズで捉えた写真ですこちらのやり方で少しDefishしています。

画面左側に立つ北斗七星の柄をたどると、アークトゥルス、スピカへと「春の大曲線」が伸びています。画面右側には獅子座が昇っていき、アークトゥルスとの間(画面中央)には髪の毛座が見えます。

 

2020年3月25日 20時19分頃  カメラ:EOS R(HKIR改造) レンズ:Sigma 15mm F2.8 魚眼(F3.5) 露出15秒 ISO 3200  ※ 「フィルターなし4枚」と「ソフト・フィルターあり3枚+フィルターなし1枚」をそれぞれSEQUATORでスタックし、Photoshop、Lightroomで処理。ソフト・フィルター(Lee 3)はドロップイン・フィルター付きマウント・アダプターを使用してレンズ後部に取り付け。

西の空では、冬の星座たちが苗場山に向かって傾いていました。

金星が圧倒的に明るい! これも少しDefishした影響で、金星の光芒が少し歪んでしまいました。

苗場プリンス(画面左下)や神楽方面(画面中央下)の方向に人工の光がありますが、これは仕方ありませんね。

魚眼レンズを使いながら輝星にソフト効果をかけ、雪景色や星野はフィルター無しでくっきり写す、というのは、先般導入した新システムの真骨頂でしょうか。

前日に雪が降り、この日は暖冬の割りに結構雪があり、テント内の気温も夜中はマイナス8度まで低下。
でも、西の空に冬の星座が傾き、東の空に春の星座が昇ってくるのを見れば、春が来ていることを実感しました。

駿河湾に沈む冬の大三角

2020年2月23日 23時08分頃 カメラ:EOS R(HKIR改造) レンズ:Sigma 14-24mm F2.8 (20mm、F2.8)  露出10秒 ISO 6400  ※「フィルターなし6枚」と「ソフト・フィルター(Lee 3)あり1枚+フィルターなし5枚」をそれぞれSEQUATORでスタックし、Photoshop、Lightroomで処理。

西伊豆で行ったEOS R(HKIR改造)テスト撮影の続きを載せます。

西伊豆から駿河湾に沈む冬の大三角。手前の明かりは宇久須の街並みです。

清水方面の光害がひどいですが、これはこれでありかと。
Flat Aide Proでレベル補正やカブリ補正を試みましたが、冬の天の川がはっきりしなくなったため、使わないバージョンを載せています。補正のやり方がいろいろありそうですが、星野写真の画角で今回のように明暗差が強いと、私の手には負えません。

2020年2月23日 22時45分頃
カメラ:EOS R(HKIR改造) レンズ:Sigma 14-24mm F2.8
(14mm、F3.2) 露出10秒 ISO 6400 
※「フィルターなし7枚」と「ソフト・フィルター(Lee 3)あり1枚+フィルターなし6枚」をそれぞれSEQUATORでスタックし、Photoshop、Lightroomで合成処理。街の部分には ISO3200、ISO1600で撮影したものを使用しています。

こちらは14mm、横構図で撮ったものです。

カペラが「箒」状になっていないのは、EOS Rのマウントアダプターでドロップインフィルターを使っているためです。手前と湾越しの街の光は、ソフトフィルターなしでくっきり。これがシステム変更に踏み切った最大の狙いでした。
ちなみに、ソフト・フィルターだけだとこんな感じになります。

こうして並べてみると、ソフト・フィルター有りの画像だけだと、街の明かりがつぶれて、肉眼で見た時と違いすぎるのがわかります。

人間の眼とは不思議なもので、星の部分はソフト・フィルター有り、それ以外はソフト・フィルターなしの画像を(特に記憶の中では)脳の中で自動的にブレンドしているような気がします。

それから、合成した時のソフト・フィルター効果の付け方には、試行錯誤して改善する余地がまだまだありそうですね。SEQUATORの「Enhance Star Light」をオンにすると、滲みは弱くなるみたいです。

硫黄岳に立つ北斗

2019年12月28日23時08分頃    カメラ:NIKON D810A レンズ:Nikkor AF-S 20mm F1.8G (F2.8) 露出6秒 ISO4000  ※ 「フィルター無し5枚」と「フィルター(Lee 5番・レンズ前面)有り4枚+フィルター無し1枚」をそれぞれSEQUATORでスタック。その後、FlatAideProでレベル補正、カブリ補正を行い、「フィルター無し基準画像1枚」も使用しながらPhotoshop & Lightroomで現像処理。

12月28日の夜に撮った星景写真を続けます。 “硫黄岳に立つ北斗” の続きを読む

房総を昇る冬のダイヤモンド(モザイク星景テスト①)

2019年9月7日 3時15分頃 カメラ:NIKON D810A レンズ:Zeiss Distagon 15mm F2.8(絞りF3.2)露出13秒 ISO 6400

9月に伊予ヶ岳で撮った写真を素材にして、かねてからトライしようと思っていた星景モザイク撮影をやってみました。上の写真がその結果です。(この手法、パノラマ撮影と言うべきなのかもしれませんが、私、モザイクとパノラマの違いがよくわかっていません。ただ、私の場合はそれほど広範囲に合成するわけではないため、モザイクという言葉を使っています。)以下、順を追って説明します。 “房総を昇る冬のダイヤモンド(モザイク星景テスト①)” の続きを読む

赤岳と冬の大三角

2019年2月2日 20時32分頃 カメラ: NIKON D810A レンズ: Nikkor AF 20mm F1.8G(F2.8) ISO 3200  露出10秒 ※ソフト・フィルター有り(Lee 3)5枚、フィルター無し5枚をSequatorでそれぞれ処理し、さらにPhotoshopでマスク合成。 Software: Photoshop & Lightroom

現像に手間取ってしまいましたが、2月2日に赤岳鉱泉に泊まった夜、赤岩の頭の下まで行って撮った星景写真を載せます。雲が何度も出ましたが、この前後は少し星空が広がってくれました。行く前は赤岳天望荘の灯りがもっと目立つかと思っていましたが、そうでもありませんでした。甲府方面の光害で天望荘の灯りが目立たないという面もあるのでしょうね。 星も山も、美しい夜でした。

ついでに、もう少し早い時間に15mmで撮った写真も載せておきます。これは前回、Photoshopによる滲み処理の作例で載せたものと同じファイルで滲ませ加減を弱くしたものです。この時は15mm用の前面ソフト・フィルターを使わなかったため、フィルター有り無しの作品はありません。今になってとても後悔しています。

2019年2月2日 20時03分頃 カメラ: NIKON D810A レンズ: Zeiss Distagon 15mm F2.8(F3.2) ISO 3200 露出13秒 ※フィルター無し7枚をSequatorで処理し、Photoshopで輝星に滲みを付加。 Software: Photoshop & Lightroom

星景写真におけるソフト・フィルター考②

間が空きましたが、前回に続いてソフト・フィルターについて述べてみます。今回は、14-15㎜の超広角レンズを使った星景写真で星を滲ませる方法についてです。

やり方は大別して三つ。①レンズ前面にソフト(ディフュージョン)フィルターを着ける、②レンズの後玉とカメラの間にソフト・フィルターを着ける、③フィルターなしで撮ってソフトウェアで星をぼかす、です。

1. レンズ前面にソフト・フィルター

これは前回書いたのと同じやり方です。ただし、問題が2つあります。

1つは、この焦点距離になると最前部のガラスが大きく凸状に丸くなり、フィルターを付けられないレンズがほとんどなこと。ニコンの14-24㎜、シグマの14㎜ F1.8など、名だたる星景用神レンズも例外ではありません。レンズ前面にフィルターを着けたければ、ZeissやLaowaの15㎜くらいしか選択肢がないのが現状です。(今後ニコンやキャノンが発売するミラーレス用ズームには、14-15㎜スタートで前面にフィルターを着けられるものがあるようです。注目したいですね。)

2つめの問題は、レンズ前面にソフト・フィルターを着けると、画面の中心から離れたところで明るい星の滲みが外側に向かって箒状になることです。西岳の写真をご覧ください。左上の輝星(ぎょしゃ座のカペラ)の形、ちょっとなあ…と思います。

2. レンズ後部にソフト・フィルター

レンズの前にソフト・フィルターを着けられないなら、後ろに着けてしまえばいい、という発想です。この場合、フィルターはガラス製ではなく、樹脂製のペラペラのもの(Leeが有名です)を切って両面テープなどで貼り付けます。

この方法のいいところは、レンズを選ばないことのほか、前面にソフト・フィルターを着けたときに周辺部で見られる箒状の光茫ができないことです。浅間山とのコラボ星景をご覧ください。周辺部の星の光茫も綺麗に滲んでいますね。星の滲み方を最重視するなら、この方法は一押しです。

でも残念ながら、この方法にも欠点がないわけではありません。ソフト・フィルターを使えば当然、前景もボケます。雪山のきびしさが先鋭に写らなかったり、街の明かりの光芒が必要以上に広がって興ざめになったりすることも…。次の2枚は同じ露出時間で撮ったものですが、ソフト・フィルターを着けて撮った2枚目はスキー場の灯りがすごいことになっています。(作例は35mmでフィルターをレンズ前面に着けて撮ったものですが、フィルターを超広角レンズの後部に着けても同じようなことになります。)

前回も述べたとおり、私は「星像を滲み、前景はクッキリ」という星景写真をめざしているため、ソフト・フィルターを着脱しながら撮影したいと思っています。ところが、レンズ後部にソフト・フィルターを着けるやり方では、この手法はとれません。(来週、キャノンからミラーレス・フルサイズ用にドロップイン・フィルターを使えるマウントアダプターが出るようです。作例が出るまで確たることは言えませんが、クリア・フィルターにLeeの樹脂製フィルターを貼り付けてやれば、レンズ後部でのソフト・フィルター着脱ができるんじゃないかと期待しています。ただし、相当な出費を覚悟しなければいけませんし、ミラーレス用の新型レンズは使えない前提となります。)

3. Photoshopで星像をぼかす

デジタルの時代、ソフト・フィルターがなくても星像を(星像だけを)滲ませることが可能になりました。私も、こちらこちらのサイトを参考にしてPhotoshopによる星像ボカシにトライしてみました。

現段階の私の結論は、うまくいく場合と行かない場合がある、というものです。パラメーターをいじったりしてみましたが、何か不自然な感じが否めません。星の彩度もそのままでは落ちてしまいます。私のレタッチ能力が低いせいもあると思いますが・・・(苦笑)

下の写真はこのやり方で星のみを滲ませた写真です。もっと弱く滲ませれば自然になる一方で星は目立たなくなり、塩梅がむずかしいです。将来の進化に期待しつつ、当面は別な方法が中心になりそうかな。

4. マイ・ウェイ(トライ&エラー)

というわけで、私自身は「これが決定版」という方法にたどり着いていません。そのことをお断りしたうえで、私の現在の撮り方をご紹介して、この長いポストを終わりにします。

レンズはDistagon 15mmで前面にフィルターを着けられます。フィルターはプロテクターにラッカーを吹き付けた自作です。このセットでフィルター有りとフィルター無しで撮影し、前景はフィルター無し、星野はフィルター有りをメインにPhotoshopでマスク合成。周辺部の輝星が箒状上になっている部分については、ブラシツールであまり目立たないように仕上げます。下の1枚目はソフト・フィルターを前面に着けて撮った写真(現像上の細工はしていますが詳細は省略します)。2枚目はフィルター有り無しで撮ってマスク合成した写真。わかりにくいかもしれませんが、カペラやポルックス、カストルを見れば、完全ではないものの同心円状の滲みに近づいています。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

星景写真におけるソフト・フィルター考①

このブログでも時々、写真撮影の機材や星景写真の撮影方法についても半ば備忘録的に書いていきたいと思います。私もいろいろな人のホームページを参考にさせてもらってきましたので、反面教師になることを含め、少しでも参考になれば幸いです。

撮影手法カテゴリーの第一弾は、星景写真におけるソフト・フィルター(ディフュージョン・フィルターとか、滲みフィルターとも言われますね)またはその代替手法について書きます。星景写真とは、星と風景を同一構図内に収めた写真、と定義して話を進めますね。

デジタルカメラで星を撮ると、星がとても小さく(鋭く)写ります。例えば、人間の目で見た時の「星がまたたく」なんて感覚は写真ではわかりません。しかも、暗い空に高ISOで撮ると肉眼では見えない星まで写るため、星座を構成する明るい星が埋もれてしまい、よくわからない写真になります。下の写真は西湖から見た冬の星座をソフト・フィルターなしで撮ったものです。星座をある程度知っている人でないと、星座をたどりにくいんじゃないでしょうか?

そこで、天の川とかを綺麗に写そうと思う時や日周運動を撮る時以外は、ソフト・フィルターを使って明るい星を目立たせることが多いのです。フィルターの前につける場合だと、ケンコーのプロソフトンAが定番のようですが、効果が1種類しかありません。Leeだと滲み加減が1番から5番まで選べます。(ただし、2番と4番はバラ売りがないようです。) これをポリエステル製なので丸く切ってレンズ・プロテクターに貼って使います。次の写真は、上と同じ構図でソフト・フィルター(Leeの3番)をレンズの前につけて撮ったものです。これだと輝星がはっきりして星座がわかりやすく、何よりもゴージャスになって絵が引き立ちますよね。

多くのサイトではここで解説終了です。でも、私がめざすのは「星は滲み、地上風景はくっきり」の星景写真なのでまだ終わりません。当然ですが、ソフト・フィルターをつけると星以外の部分も含め、画面全体が滲んでしまいます。上の写真を見ても、前景のボートや街灯がぼやけてしまっていますよね。で、いろいろやってみた結果、最近はソフト・フィルターをつけて撮った星空の部分とフィルターなしで撮った前景部分をPHOTOSHOP等を使って合成する手法に落ち着きました。それが下記の写真(昨年12月29日にアップしたもののオリジナル)です。「星は滲み、地上はくっきり」になっていると思います。

以前は(人によっては今も)合成手法を使った写真を認めない風潮が強かったようです。でも私は、「あり」だと考えます。合成手法を使った写真であることを明記し、それを理解したうえで鑑賞してくれる人に見てもらう、というスタンスです。ただし、合成する写真の間隔が長くなると、トリックと言われても仕方ないでしょう。そこでマイ・ルールとして、フィルターあり・なし写真を撮るときは概ね1~2分以内で一連の撮影を終えるようにしています。

とりあえず、今日はここまで。次回は、超広角レンズを使うときの星の滲ませ方について、私の試行錯誤した経過をご報告したいと思います。