房総を昇る冬のダイヤモンド(モザイク星景テスト①)

2019年9月7日 3時15分頃 カメラ:NIKON D810A レンズ:Zeiss Distagon 15mm F2.8(絞りF3.2)露出13秒 ISO 6400

9月に伊予ヶ岳で撮った写真を素材にして、かねてからトライしようと思っていた星景モザイク撮影をやってみました。上の写真がその結果です。(この手法、パノラマ撮影と言うべきなのかもしれませんが、私、モザイクとパノラマの違いがよくわかっていません。ただ、私の場合はそれほど広範囲に合成するわけではないため、モザイクという言葉を使っています。)以下、順を追って説明します。 “房総を昇る冬のダイヤモンド(モザイク星景テスト①)” の続きを読む

星景写真におけるソフト・フィルター考②

間が空きましたが、前回に続いてソフト・フィルターについて述べてみます。今回は、14-15㎜の超広角レンズを使った星景写真で星を滲ませる方法についてです。

やり方は大別して三つ。①レンズ前面にソフト(ディフュージョン)フィルターを着ける、②レンズの後玉とカメラの間にソフト・フィルターを着ける、③フィルターなしで撮ってソフトウェアで星をぼかす、です。

1. レンズ前面にソフト・フィルター

これは前回書いたのと同じやり方です。ただし、問題が2つあります。

1つは、この焦点距離になると最前部のガラスが大きく凸状に丸くなり、フィルターを付けられないレンズがほとんどなこと。ニコンの14-24㎜、シグマの14㎜ F1.8など、名だたる星景用神レンズも例外ではありません。レンズ前面にフィルターを着けたければ、ZeissやLaowaの15㎜くらいしか選択肢がないのが現状です。(今後ニコンやキャノンが発売するミラーレス用ズームには、14-15㎜スタートで前面にフィルターを着けられるものがあるようです。注目したいですね。)

2つめの問題は、レンズ前面にソフト・フィルターを着けると、画面の中心から離れたところで明るい星の滲みが外側に向かって箒状になることです。西岳の写真をご覧ください。左上の輝星(ぎょしゃ座のカペラ)の形、ちょっとなあ…と思います。

2. レンズ後部にソフト・フィルター

レンズの前にソフト・フィルターを着けられないなら、後ろに着けてしまえばいい、という発想です。この場合、フィルターはガラス製ではなく、樹脂製のペラペラのもの(Leeが有名です)を切って両面テープなどで貼り付けます。

この方法のいいところは、レンズを選ばないことのほか、前面にソフト・フィルターを着けたときに周辺部で見られる箒状の光茫ができないことです。浅間山とのコラボ星景をご覧ください。周辺部の星の光茫も綺麗に滲んでいますね。星の滲み方を最重視するなら、この方法は一押しです。

でも残念ながら、この方法にも欠点がないわけではありません。ソフト・フィルターを使えば当然、前景もボケます。雪山のきびしさが先鋭に写らなかったり、街の明かりの光芒が必要以上に広がって興ざめになったりすることも…。次の2枚は同じ露出時間で撮ったものですが、ソフト・フィルターを着けて撮った2枚目はスキー場の灯りがすごいことになっています。(作例は35mmでフィルターをレンズ前面に着けて撮ったものですが、フィルターを超広角レンズの後部に着けても同じようなことになります。)

前回も述べたとおり、私は「星像を滲み、前景はクッキリ」という星景写真をめざしているため、ソフト・フィルターを着脱しながら撮影したいと思っています。ところが、レンズ後部にソフト・フィルターを着けるやり方では、この手法はとれません。(来週、キャノンからミラーレス・フルサイズ用にドロップイン・フィルターを使えるマウントアダプターが出るようです。作例が出るまで確たることは言えませんが、クリア・フィルターにLeeの樹脂製フィルターを貼り付けてやれば、レンズ後部でのソフト・フィルター着脱ができるんじゃないかと期待しています。ただし、相当な出費を覚悟しなければいけませんし、ミラーレス用の新型レンズは使えない前提となります。)

3. Photoshopで星像をぼかす

デジタルの時代、ソフト・フィルターがなくても星像を(星像だけを)滲ませることが可能になりました。私も、こちらこちらのサイトを参考にしてPhotoshopによる星像ボカシにトライしてみました。

現段階の私の結論は、うまくいく場合と行かない場合がある、というものです。パラメーターをいじったりしてみましたが、何か不自然な感じが否めません。星の彩度もそのままでは落ちてしまいます。私のレタッチ能力が低いせいもあると思いますが・・・(苦笑)

下の写真はこのやり方で星のみを滲ませた写真です。もっと弱く滲ませれば自然になる一方で星は目立たなくなり、塩梅がむずかしいです。将来の進化に期待しつつ、当面は別な方法が中心になりそうかな。

4. マイ・ウェイ(トライ&エラー)

というわけで、私自身は「これが決定版」という方法にたどり着いていません。そのことをお断りしたうえで、私の現在の撮り方をご紹介して、この長いポストを終わりにします。

レンズはDistagon 15mmで前面にフィルターを着けられます。フィルターはプロテクターにラッカーを吹き付けた自作です。このセットでフィルター有りとフィルター無しで撮影し、前景はフィルター無し、星野はフィルター有りをメインにPhotoshopでマスク合成。周辺部の輝星が箒状上になっている部分については、ブラシツールであまり目立たないように仕上げます。下の1枚目はソフト・フィルターを前面に着けて撮った写真(現像上の細工はしていますが詳細は省略します)。2枚目はフィルター有り無しで撮ってマスク合成した写真。わかりにくいかもしれませんが、カペラやポルックス、カストルを見れば、完全ではないものの同心円状の滲みに近づいています。

お付き合いいただき、ありがとうございました。